今回はBell麻痺やHunt症候群などの末梢性顔面神経麻痺に対する鍼灸治療とリハビリテーションについて少しお話しさせていただきます。
- 末梢性顔面神経麻痺については以前のブログで紹介させて頂いておりますので、そちらをご参照ください。
発症から・・・
<超急性期>
発症初期の超急性期では発症から1~2日以内に可及的速やかにウイルスの増殖を阻止するための抗ウイルス薬と、さらに浮腫による絞扼障害を改善させるための大量の副腎皮質ホルモン(ステロイド)を5日間投与して、炎症による浮腫や絞扼障害の予防と軽減を図ります。
<麻痺急性期>
発症から2~3週間の期間を麻痺急性期と言います。発症から10~14日で行う電気生理学的検査(ENoG)では、神経変性(軸索変性)の程度を確認して機能予後診断を行います。その他に、柳原法やSunnybrook法、House-Brackmann法などの評価表にて麻痺の重症度などを評価します。リハビリでは継続して表情筋のこわばりなどが起きないように表情筋のマッサージを行い、麻痺によって動かなくなっている表情筋の緊張を取り、表情筋が動きやすいようにすることが大切です。また顔のこわばりなどが生じると顔面が重くなり、表情筋のアンバランスにより、肩や首の筋肉などにコリや圧痛が生じてしまうため、首や肩のマッサージも必要なってきます。
電気生理学的検査(ENoG)・・・顔面神経を刺激して、顔面筋からの複合筋活動電位の振れ幅を健側と比較して%で表したもの。
<麻痺回復期>
発症から3~4週間が過ぎてくると、薬物療法に加えリハビリテーションが治療の主体となってきます。ここでとても大切なのが、発症から10~14日で行う電気生理学的検査(ENoG)によって得られた軸索変性の程度と機能予後診断の結果を考慮したプログラムを立案することが重要となります。発症から4か月間程度は、損傷された神経の再生に伴う迷入再生がどの程度出現するのかを勘案しながら、筋力強化から始めるのか、マッサージから始めるのかを考える必要があります。この期間に誤ったリハビリテーションを行うと、病的共同運動の後遺症を顕著化してしまったり、筋短縮による顔面拘縮を促進してしまったりします。
ENoG≧40の症例では、発症4ヶ月以降に病的共同運動は出現しないとされる。
<後遺症増悪期>
発症から4ヶ月が経過すると、ENoG<40%の症例では神経変性によって損傷された神経線維が、徐々に表情筋に到着して迷入再生された神経による病的共同運動が顕著化してきます。この期間に大切なのは、①病的共同運動の増悪予防②病的共同運動の回避③筋力低下に対するアプローチ④鏡によるフィードバック⑤顔面拘縮の改善⑥分離運動の練習などのリハビリテーションが大切となります。この時期に修得したリハビリテーションは、発症後2~3年以上が経過しても、あきらめずに練習を続けることで表情筋の拘縮が予防され、不随意運動による緊張が取れ、分離運動を維持・改善することができます。
<後遺症固定期>
発症から8~10か月になると後遺症固定期となり、迷入再生回路による病的共同運動が顕著化することが多く、強い表情筋の運動によりこの傾向は強くなってしまいます。
このように、末梢性顔面神経麻痺に対するリハビリテーションには神経損傷の程度を確認し、損傷大きい症例では将来起こるであろう病的共同運動を予測しながら、リハビリテーションを指導、実施することがとても重要です。
鍼灸治療が筋の緊張や麻痺に伴う顔面拘縮や、拘縮による安静時の左右非対称性、病的共同運動の軽減などに効果かあるという事は、顔面神経学会や各学会などにも多く発表、報告されており、当院でも多くの方が症状の変化や改善を実感されています。
顔面神経麻痺を発症されて間もない方や発症から時間が経過していて、なかなかマッサーッジだけではお顔のこわばりや拘縮などが改善せずにお悩みの方など、治療の選択肢として鍼灸治療を取り入れてみる事が症状改善につながる可能性は十分にあります。
正直なところ、お顔に対する施術(鍼治療)は、どんな施術者が治療するのかなどお身体に対する施術よりも、不安や緊張があると思います。ましてや麻痺などの症状があれば不安が大きくなり、治療に二の足を踏んでしまうこともあると思います。当院のスタッフは、日本顔面神経学会において顔面神経麻痺リハビリテーション技術講習会認定試験に合格をした専門家(理学療法士、鍼灸師)です。施術やリハビリ対してはもちろん、ご相談にもしっかりとお答えさせていただきますので、まずはあきらめないでお気軽にご相談ください。
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